黄色いカラスとひよことカラス

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ひよこの横顔

お前はカラスが好きか?俺は嫌いだね。お前は誰かカラスが好きなヤツを知ってるか?俺は知らない。ひとりも知らない。そんなヤツ、どこにもいるとは思えねぇ。なんでそんなに嫌いかって、理由はいろいろあるけどな、やっぱこの色がいちばんだ。黒、真っ黒、ただどこまでも真っ黒だ。だから俺は、カラスが嫌いだ。そして俺も、そのカラスなんだ。

だけどそんな俺にも、ついにツキが回ってきたらしい。黄色いペンキだよ。黄色いペンキがバケツにたくさん、無造作無防備置いてあったのさ。それを見た俺は、迷わなかった。一気にダイブ!ペンキ浴びだ。それから俺は毎日毎日、何度もペンキを浴び続けた。もっともっと、黄色くなれ。もっともっと、黄色くなれ!

 

そしたらいつの間にか、俺の周りには誰もいなくなった。アイツらは俺に何度も言う。

汚い汚いキイガラス!格好悪い、醜いカラス!

俺の美学は、誰にも通じなかった。そんなんだから、お前らはいつまでもそうなんだよ。でも寂しくはなかったぜ?むしろ俺は、すごく嬉しかったんだ。

俺が上機嫌で飛んでいると、遠くから俺は見つけた。俺の憧れ、俺の夢。黄色い黄色い、ひよこだった。俺は調子に乗って、話しかけた。

よう、ひよこ。調子はどうだい?いきなりでなんなんだけど、俺はお前が好きなんだぜ。特にその色の、黄色いのがさ

そしたらひよこはこう言った。

そうなんですか?ありがとう。でもこの色は自分では、そんなに好きでもないんです。それより私も早く大きく、立派なにわとりになりたいんです

なんだ、趣味が合わねぇもんだ。俺はにわとりよりもずっと、ひよこのほうが好きだけどな。その黄色さに憧れて、からだを黄色のペンキに漬けて、何度も浴びに浴びたくらいさ。周りのヤツらはバカにして、「キイガラス」なんて言ってくるけど、俺にとっては黄色いからだ、それがなによりの理想なんだ

俺は誇らしくそう言った。俺の根っからの本心だった。けどそんな俺の話を聴いて、ひよこは少し驚いて、だけどはっきりこう言ったんだ。

そうですか、そんなものですか?けれど私にはあなたのからだ、「キイガラス」なんてもってのほかで、今までのどんなカラスより、黒々として見えますけどね?

 

彼は誰より黒かった。それはもう神々しいほどに。だから彼は多くのひとに、敬われ好かれてもいたけれど、それと同じくらいのひとに、疎まれ嫌われてもいたの。あまりに飛び抜けていたから。あまりに計り知れないから。

けれどそんな彼がいつからか、毎日バケツに飛び込んで、からだを黄色に染めている。そんな話が出たときに、誰かが彼を「キイガラス」、そんなふうに呼んで笑って、煽って傷つけ追い落とし、だんだん居場所をなくしていって、ついに群れから追い出したのよ。そうやって彼らは護ったの。自分の心の平安を。

だけど私は知っていた。彼はキイガラスなんかじゃない。ペンキなんかじゃ歯も立たない。誰より黒くて美しい、そんな素敵なカラスなんだって。もちろんそんなことは、ほんとは誰でも知っていた。でも私は誰よりも、いちばん彼が好きだった。だから私はいつまでも、彼を見るのをやめられなくて、やめたいと思うこともなくって、それでずっと追いかけていて、ずっと彼のことを見ていた。そしたらひよこと話していたの。

私はほんとは最初には、彼にペンキ浴びをやめてもらって、誰にもバカになんかさせない、真っ黒々なからだに戻って、群れに帰ってほしかった。けれど彼があんなにも、心から黄色くなりたいのなら、それがほとんど無意味でも、どんなにバカなことに思えても、彼を応援しようと思った。黄色だろうが黒だろうが、誰より黒かったとしても、中途半端な黒だとしても、彼は彼でしかないから。私の好きな、彼なんだから。いつか私がもう少し、上手に話せるようになったら、私は彼が好きなんだって、そんなあなたが好きなんだって、伝えられるようになりたいなぁ。本当にそう、なってみたいなぁ。

 

黄色くなりたいカラスだなんて、ヘンなひともいたものですね。私は早くおとなになって、誰より素敵で美しい、そんなにわとりになるのです!

 

 
俺は黄色くはなれないのか?でもやっぱり、なってみたいなぁ。たとえ黄色じゃないにしてもさ、黒いからだだけはイヤだね。だから俺は諦めないぜ。やっぱ絶対、諦めないぜ!

って、なんだかすごく懐かしい、カラスみたいなそんな気配が、近づいてくる気がするぞ?でも誰がどんなに笑っても、俺は絶対に折れないぜ!俺は誰よりいい鳥になる!誰より素敵な、鳥になるんだ!

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