2018年4月7日に、あなたへ送る手紙

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万年筆で書いた手紙

もう4月だね。4月と言えば僕にとっては、やっぱり「不安」の象徴みたいなところがある。まぁ僕はいつだって不安と縁が切れないと言われたらそのとおりなんだけどさ、それでも4月にそれが強まるのは、やっぱり学校の思い出と密接に結びついてるからだと思う。

よく、

新入生のみなさんは、不安と期待に胸が膨らんでいることと思います

なんて言われることがあるけどさ、でも僕は思い返してみたらずっと、

これで環境が変わったから、心機一転できる!

って思ったことが、そんなにないんだと思う。だって、どこに行ったってそこにはひとがいるわけで、そうである以上いろんなことが起こるじゃない?だからその意味で、僕には「期待」はそんなになかったんだと思うんだ。でもそれ以上の不安はある。だから、怖かったんだと思うよ。ずっと、変わらないのかなぁ。

 

あんたは大勢のひとたちのおかげで生きていられるんだから、ほんの少しでも恩返しするんだよ

って、ちいさい頃からずっと言われてきて、それが事実であることもずっと知ってたから、別に嫌な気持ちはなかったけど、未だにどうしていいかわかんないところはある。でもこれが、こないだの手紙で書いた

「責任感の強さ」

につながってるんだとも思う。ただこれが、家族の期待したような

「自分や周りのひとたちを安心させるような生きかたをする」

っていう方向には、はたらかなかったというだけで。別に僕だって、周りを不安にさせたいわけじゃないんだけどね。それに、説明したことがないわけでもないんだ。ただ今のところはまだ、うまく伝えられてないってことなんだ。

でも、それを

「恩返し」

と呼ぶのか、あるいは

「罪滅ぼし」

とか、なにか他の名前で呼ぶのかはわかんないけど、ともかく僕は少しでも、誰かの役に立ちたいとは思ってる。そう思わなかったことはないから、その点では、これは確かに「教育の成果」だとも思う。でももっと言えば、これは自然に身についていたものだとも思う。だって、誰かが喜んでくれたら嬉しいのは、みんな同じだと思うもん。

 

だからさ、その意味では僕の家族は、最初からなんの心配も要らなかったんだ。家族からしたら

放っておいたらこの子は、「自分は周りのひとに助けてもらうのが当たり前なんだ」と思って、すごく傲慢な子になってしまうかもしれない。だからそうならないように、ちゃんと導かないと

って思ったのかもしれないけどさ、そんなことを心配する必要はなかったと思うよ。きっと僕は、家族になにも言われなくたって、誰かの役に立とうとしてたと思うもん。

ただ、もともとがそうだからこそ、そこにさらに周りからの教育の成果が相まって、こんな性格の僕になったんだと思うんだ。そして僕は、自分のこんなところは嫌いじゃない。でも、それをそれとして認めたうえで、今までのことも改めてぜんぶ振り返ってみると、僕はやっぱり

誰かのために生きるのは好きだし、そんな自分になれたことを誇りにも思うけど、でも「自分のために生きる」っていうのが、うまくできない、っていうか、そもそもそれ自体が、よくわかってない

って、思っちゃうところがある。そしてそれは今初めて気づいたわけじゃないけど、あなたも同じなんだと思う。

 

でも少なくとも僕の場合は、

誰かのために、自分のことは我慢しよう!

とか、そんなふうに思ってるってわけでもないんだ。だから僕は一般的な意味で、自分のことを「いいひと」だと思ったことはない。ただ、みんなにしあわせでいてほしいとは強く思ってる。そして、みんながしあわせでいてくれたら、自分もしあわせだなぁと思う。だからこれも結局、

「自分のしあわせのため」

だっていうのは、間違いないんだ。だって僕は、いつも自分もしあわせになりたいと思って、生きているんだからね。

だから、ここまで考えたら、今の自分がそんなにおかしいとか、すっきりしてないというわけでもないんだ。でも一方で、

ここで話を終わりにしちゃったら、これで「わかったつもり」になっちゃったら、なにかをずっと見落としたままになっちゃうんじゃないか?

っていう気持ちも、ずっとあるんだ。そして、なんで今こんなことを考えているかっていうと、こういうことを考える機会が、あなたと関わってから、増えたからなんだ。それはあなたが僕に対して、

もっと自分自身のことも、大切にしてあげて

ってことを、細かな表現を換えながら何度も何度も、僕に言ってくれたからだと思う。そしてあなたも知ってるとおり、僕にこういうことを言ってくるひとは、他にもいる。だけどたくさんのひとに何度も言われたら、そりゃあ言われないよりもっと気にするし、それが他でもないあなたに言われたことなら、僕は誰の言葉よりも、それを気にするに決まってるんだ。だからずっと、それを考えてるんだ。

 

でもね、あなたにはそんなふうに言われる僕に対して

お前は毎日のほほんと暮らして、好きなときに好きなことだけして生きられてるんだから、いい身分だよなぁ

って、言ってくるひともいるんだよ。それは別に、僕のことを見たことも話したこともないひとだけじゃない。だからこれは、結局は、

「立場と視点の違い」

なんだろうなぁって、思うこともあるんだ。

 

だけど、それでもあなたが僕のことを大切に気にかけてくれてるから、そんなことを言ってくれるんだってことは、僕だってわかってる。そしてそれはありがたいし、嬉しいことなんだ。だからあなたが、そんなふうに願ってくれてることは、ちょっとずつでもできるようになりたいって、いつも思ってるよ。そしてほんとは、僕だってあなたに、同じことを願ってるんだよ。だから僕とあなたは、ほんとは自分に対して言うべきことを、うまく言ってあげられないから、お互いに言い合ってるんだ。そしてこれは実際に、あなたと直接話したことでもある。僕は今でも、そう思ってるよ。

 

だからうまくできるようになったら、教えてほしいと思うよ。最初は、僕よりはあなたのほうがずっと上手なのかと思ってたし、今でも多少はそう思ってるところがあるけど、実際はそんなに差がないというか、同じくらいどうしようもなく下手なんじゃないかなと思ってる。でもそれは、僕も下手すぎて、あなたに教えられないからでもあると思うんだ。自分にできることなら、なんでも教えてあげられるんだけどな。でもあんまりうまくできすぎると、「できない理由」がわかんないから、やっぱりうまく教えられないんだと思うよ。だからその意味では、僕とあなたが同じくらいのレベルなのも、よかったのかもしれないと思うよ。そして僕が、あなたの願ってくれてるとおり、もっと僕自身のことを大切にできるようになったら、そのときはきっとあなたとも、もっとうまくやっていける僕になってると思うんだ。だって今はあなたにうまく伝わってないかもしれないけど、僕がほんとに大切にしたいのは、いつだってあなたのことなんだもん。

 

今日はね、「海外グリーティング(差額用)」から、だんごとたいやきの切手をどうぞ。喉に詰まらせないように、よく噛んで食べてね。

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