螺旋階段

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螺旋階段

なにをそんなに哀しんでんだ?

俺がいったいどこで生まれて

どうやって生きてきたのかを

まるでもう忘れましたみたいな

しゅんとした顔をしやがって

 

たとえ周りに誰もいなくて

敵しかいないようなときでも

ひとと言えば傷つけ攻めてくる

そんなやつしかいないときでも

そんな日々がいつまで続くか

目処すらなかったときだって

俺はそこで生き延びただろ?

それが俺の在りかただっただろ?

 

それがなんだ 今のお前は

息を吸う間もないわけじゃなく

飲む水もないわけじゃなく

世界をなにも知らないわけでも

眠る場所がないわけでもない

それなのになんだその顔は?

 

俺たちを育ててくれた

ホームグラウンドはどこだった?

お前のまさに「おふくろの味」は

甘くて優しいものだったかよ?

ふざけるなよ こんなところで

そんなに傷つくようなお前が

昔よりも「成長」したと

言うのならそんなもんは絶対に

俺が認めることはない!

同じことを同じように

同じ期間味わったとしたら

今度は潰れてしまうと言うなら

そんな俺はもう俺じゃねぇ!

そんなものは俺は要らねぇ!

 

そう騒がなくてもいいってば

確かにもしかしたらだけどね

今のような状態のまま

かつてのような状況と

同じことになったとしたら

今度はもう心が折れて

潰れてしまうのかもしれない

 

でもだからこそ もう2度と

同じことを味わいたくないと

必死になってそこを抜け出して

変わってきて今があるなら

その結果自分が仮に

部分的には「弱く」なってても

それすらも「成長」だって

言ってあげてもいいと思うよ?

 

俺はあなたのことも好きだけど

今の自分も嫌いじゃないよ?

だっていつだってほんとには

「冷徹」になりたいわけじゃなく

たとえ敵に対してだって

消えない傷をつけたくはない

それに昔より今のほうが

表情が豊かになったから

その結果哀しんで泣いたり

顔を歪めることもあるけどさ

それはほんとはただ単に

「弱くなった」とも決めつけられない

 

だってさ あなたは昔のほうが

こんなことが起こったとしても

今ほど傷つくこともなく

生き延びられたって言うけどさ

もし昔からなにも変わらず

そのままで今の状況に

放り込まれたと想像したら

たぶんそれこそ死んでるし

その「絶望」を味わうことも

ないまま終わってると思うよ?

 

感じていないふりをすることで

自分を生き延びさせるのは

確かにひとつの方法だし

あのときの僕たちにとっては

あれが唯一の生存戦略

だったと今も思っているよ

だけどほんとのほんとには

それはしかたないことだとしても

確かにひとつの「逃げ」なんだ

 

だから今の僕の場合は

自分が感じている苦しみも

痛みも哀しみも切なさも

すべてを受け止めきったうえで

当然の反応として

当たり前に哀しい顔をして

それでもだからこそそこから

なんとか未来を紡ごうと

しているっていうことなんだよ?

 

今の僕が今の状況で

希望に胸を膨らませて

いないのも見たらわかるけど

だからと言って絶望に

呑まれて目的を失って

思考停止に陥ってもない

そして今だって自分がほんとに

感じてることをちゃんと正しく

意識しきれてるわけじゃないけど

でもこれだって昔よりは

だいぶ向き合えていると思うよ?

 

だからあなたの言うとおりなんだ

ほんとは昔どうしようもなく

最悪の状況にあったとき

そのときこそほんとの意味で

もっと「苦しむ」べきだったんだ

だけどあのときはあまりにも

苦しみが器より多すぎて

自分が苦しんでるかどうかすら

確信できてなかったし

そもそもそんなふうに自分を

ゆっくり振り返るほどの

ゆとりや余暇なんてものは

まったくなかったんだもん

だからせめて今のようなときくらい

哀しいから哀しんでたり

苦しいから苦しんでたりしても

それはいいことだとほんとには

苦しみながら思ってるんだよ?

 

だからあなたがそうやって

僕に怒るのもわかるけど

あなたに怒られるようなこと

ほんとにはまだ 存在しない

 

だって僕はあきらめてないもん

別にこれでどうしようもないとか

永遠に俺はこうなんだぁ

クズだゴミだ死ねばいいんだ

宇宙に生まれてごめんなさいとか

そんなふうに思ってないもん

もしそう思ったときにはさ

もっと怒ったっていいよ

完膚なきまでに潰していいよ

そもそもそんな思考では

あなたの想いに向き合えない

だから原理的自動的に

そのとき僕はあなたとこうして

話し合う資格さえ持てないで

退けられることになる

 

だけど今はそのときじゃない

それにそんな日が来ることはない

そしてこれは今のあなたが

認めるかたちじゃないにしろ

僕の自覚する範囲では

確かに「成長」だと思ってる

だって昔はできなかったことが

今はできてるわけだから

昔よりちいさな苦しみに

昔より苦しんでると

あなたが太鼓判を捺すなら

それは昔より今のほうが

自分に優しくなったってことだ

そしてそうできる状況に

自分を置けたということだ

 

だからそうだね 想像だけど

もし今度またあのときのような

状況に置かれたとしたら

今度はずっとずっと泣き続けて

その涙で洪水を創って

すべてを押し流しちゃうかもね

だからやっぱり今のままでも

生き延びられるとは思うよ?

それになにより今のほうが

昔よりはるかに明白な

「目的」があるわけだから

ほんとには 悪い気分でもない

だから前ほど 長くかからない

宇宙の暦で数えるような

あんな長さになることはない

 

それに今度こそ僕とあなたの

目的は同じわけだから

僕が目的を果たしたときには

あなたにも喜んでほしいよ?

まぁ別に褒めてほしいのは

あなたからじゃないからいいけどね

 

よく見てよ 廻りながらでも

同じ景色を見ているようで

ちゃんと進んでいるからさ

今度あなたに会うときも

ここからまた1周上で

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