しあわせになれと言う声がする

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独り浜辺を歩く男性

あなたは死んでしまったのに

未だに僕は生きています

あなたは泣いているというのに

僕は楽しく笑っています

どんなに「想像」してみても

「現実」に及ぶことはないのに

ふてぶてしくも 祈っています

 

知っていますか 祈りとはまず

あなたのために あるということ

生者が死者への消えぬ想いを

整理し包み 手向けることで

自分もまだ生きていいんだ

ここにいたって悪くないんだと

自分を赦す その手法だと

 

それにね 私は元気です

いのちとは実にしなやかで

ふてぶてしくもあるものだから

だからね 今の私はむしろ

あなたに強く こう言いたいの

しあわせになってくださいな

もっとしあわせで いてくださいな

 

想像してみてくださいな

あなたがまさに死ぬそのときに

または死んでしまったあとで

生きる愛しいひとたちに

どんな言葉を 遺すでしょうか?

どんな祈りを 向けるでしょうか?

 

僕が死んでしまうそのときに

誰もいないのは寂しいし

死んでしまってせいせいしたと

すぐ忘れられるのは哀しいね

だけどやっぱり だからといって

愛する大切なひとたちが

いつまでも僕の「死」を引きずって

梅を見ても桜を見ても

山々を森を海を見ていても

いつどんなときも泣いていて

うつむきながら 生きているなら

生きてることも わからずいるなら

それがいちばん 哀しいことだ

あまりに切ない 苦しいことだ

 

もしもそのとき 僕に言葉を

選ぶ力が残っているなら

すぐにしあわせになんてなるなよと

言いたい言葉も そっと秘めつつ

けれどやっぱり傍らにいる

愛するひとの髪を撫でながら

笑ってこう強く言うだろう

しあわせになれ

しあわせでいろ

今はその声がまだ生きている

僕の耳もとで 響き続ける

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