勝ち逃げよりは負けを選ぶよ

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深い霧のなかの男性

このひとは愛を知らないの

どんなに言葉で態度で声で

日々を積み重ねてみたとしても

一向に伝わらなかったの

だから私は最終手段

あなたのためなら ひとつのいのち

棄ててもまったく惜しくないよと

言った言葉の その証にね

ナイフを喉に突き刺して

私のいのちを 断ったのですと

あなたは哀しくそう言った

 

だけどねそれでも このひとにはね

まったく伝わらなかったの

私の最終手段すら

通じなかった今となっては

もはや他に手はまったくないし

もはや他の誰がやっても

答えは自ずと 見えているでしょう?

あなたももう諦めなさい

あなたもそろそろ 諦めなさい?

 

そう 確かにね あなたの言うこと

僕にはとても よくわかります

それにね 実際にいのちを懸けて

愛を貫こうとしたそのことは

とてもとってもすさまじい

覚悟がなければできないことで

その淵を見た 僕にとっても

真似のできない選択ですね

だからあなたの その言葉には

その想いには 生きかたにはね

重みがあること まず認めます

 

けれどそれでも言いたいことは

あなたのそれは ただ「勝ち逃げ」だ!

そりゃあたったひとつしかない

かけがえのない そのいのちすら

実際に棄てて見せられたなら

誰でもあなたに 負けるしかない

しかも反撃も反論も 和解の余地もないに等しく

遠くにいった あなたに対し

勝てるひとなど どこにもいない

でもね それはほんとのほんと

心の底の 底の底から

「美しいこと」と言えるのか?

愛を貫くために死んだと

「美談」にしても いいものなのか?

 

確かに痛みはあっただろうさ

確かに覚悟もあっただろうさ

確かに苦しかっただろうさ

でもね 結局あなたがしたのは

自分を早くこの眼の前の

強い相手のリングから降ろし

禁忌の技を 行使することで

自分を「永遠の勝利者」にして

結局自分をラクにする

そんな「逃げ」だと 言う以外にない!

 

あなたは当初の目的よりも

自分の「勝ち」を優先した

そんなものは愛なんかじゃない!

あなたの当初の目的は

愛の存在を認めさせること

それなのに「半端に勝って」

勝ちきらなかったそのために

むしろ当初の目的を

果たすことはなお 難しくなり

あなた自身も 傷ついている!

そんなものは「勝ち」と言えない!

 

しかもね 相手の立場に立てよ

あなたが死んでしまったら

「死んだひとは 愛したひとで そのひとはもう戻らない」

この事実を受け入れようと

すればするほど 苦しくなるよ

だから「俺は愛してなかった」と

ますます思い込みに逃げ

結果さらなる被害者を

増やすことにそう つながるだけだ

だからあらゆる意味において

勝ち逃げはほんとの意味で

誰が誰にも 勝っていないし

むしろ当初の目的からは

「負け」と言われてもおかしくないが

それでも誰も あなたにそれを

言えぬ雰囲気 作られている

それがあなたの していたことだ!

 

あなたと私はよく似てる?

これ以上の方法はない?

答えは自ずと 見えているだと?

いいやそうじゃない

それなら俺は

勝ち逃げよりは 負けを選ぼう

全力死力の限りを尽くし

当初のほんとの目的どおり

いのちを懸けて 愛を伝えよう

決していのちを 棄てることなく

力の限り 愛を伝えよう

それでどうしても 伝わらなけりゃ

唇は噛み 肩は落とすが

それでもそのときが来たならば

素直に負けを認めよう

 

しかしたとえ俺が負けても

その俺が開けた 蟻の一穴

いずれ誰かが 貫き通し

このひとに愛を 教えるだろう

心の底から 認めさせるだろう

そうすればそれは「俺の負け」でも

「チームの勝利」「俺たちの勝ち」

つまりは 「任務達成」なのだ!

 

それにねこれは 自己犠牲でもない

だってそんなにこれ以上なく

全力尽くした そのひとのこと

見ているひとが 誰もいないなど

傷ついたまま 棄てられるなど

そんなことには ならないからだ

これは「幻想」じゃなく「現実」だ

ほらね ここにも愛の芽が出る

近づいてくる 足音がする

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