「デザイナーベビー」と「乳児への脳スキャン」の容認は、ひとつの未来を示唆してる

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青く塗られた3基のDNA

僕は前から

神奈川の障碍者施設、津久井やまゆり園で起きた事件について、ずっと考えている。毎回書く度に、これで、書ききった。区切りをつけら...

と言い続けていて、これはすべてを貫く僕の基本的価値観のひとつになっている。でも、それがどんなものであれ、それをわざわざ社会に向かって言うってことは、

これは決して、社会の共通認識じゃない

ってことを深く自覚してるってことだ。

そしてその想いは、こないだ見た2つのニュースをきっかけに、より深まったんだ。

「重大な疾患を避けるため、遺伝子操作をすること」を識者が支持しているという話

まずそのひとつがこれだ。

人間の遺伝子を操作してより優れた子どもを生み出す「デザイナーベビー」を認めるか認めないかという問題に、アメリカ科学アカデミーが「将来的に、ある一定条件のもとで人間の生殖細胞系を編集することは、重大な疾病を防ぐことにつながるため許可されるべきである」という考えを示しました。

アメリカ科学アカデミーは22人の著名な科学者と専門家を集め、216ページにも及ぶ遺伝子編集技術に関する報告書を作成しました。この報告書には、「生殖細胞系を編集するには細心の注意が必要ではあるものの、禁止されなければいけないということはない」と記されています。

ただし、生殖細胞系に遺伝子編集を施すことが十分に安全であると確認できるまでには「長い年月がかかるだろう」とのこと。また、生殖細胞系に遺伝子編集を行う際には厳格な監視の下で実験が進められるべきであり、「遺伝子を改変して知能指数を高める」といった取り組みについては現在は行うべきではなく、遺伝子編集を認可する領域について明確に線引きする必要があると指摘しました。

ここで言われていることをすごく単純にまとめちゃえば、

もちろんなんでもかんでもやっていいなんて思わないけど、「重大な疾病を防ぐため」っていう目的があるなら、遺伝子操作をいつまでも禁止すべきだとは思えない(将来的には、許されていってもいいんじゃない?)

っていうことなんじゃないかと思うんだ。

そしてこれが「アメリカ科学アカデミーが22人の専門家の合意のもと出した意見だ」ということの意味は、決して小さくないと僕は思ってる。

ただこのニュースだけだと、まだ僕の懸念の半分以下しか伝わらないと思う。だから今度は、これを併せて読んでみてほしい。

脳スキャンを行うことで、乳児の「ASDのリスク」を予測できるという話

それがこれだ。

ハズレット氏らは障害を持つ兄・姉を持ちASDのリスクが高いと考えられる子ども102人と、ASDのリスクが低いと考えられる子ども42人を対象に、生後6カ月・生後12カ月・生後24カ月の3回、脳のスキャンを行いました。

すると、ASDの子どもには生後1年目という早い段階で、脳のうち言語など高度な機能を担う部分の表面に違いが見られることがわかりました。AIを用いて脳のスキャン画像を分析すると、80%という高い確率でASDの子どもを予測することができたとのこと。

ASDの診断が早期に行えれば、行動療法などを早い段階から取り入れることができます。

ここで提唱されてることをざっくり言えば、

1歳くらいの乳児であっても、脳スキャンを行うことで、リスクを予測して、「適切な対応」を採ることができますよ〜

ってことだと言っていいと思う。

そしてこの発表は、どう考えても否定的には受け止められてない。つまりこれは、今後の社会に少しずつでも浸透していく可能性があるってことだ。

じゃあここで、この検査を受ける・促進する理由として挙げられてる「行動療法などが早くから取り入れられる」っていうのがいったいどういうことなのかを考えてみたい。でもそうしてちょっと調べてみると、まずはこんなのが見つかった。

広汎性発達障害に対する認知行動療法は、現在のところ確立したものではありません。

ただし、認知行動療法がそもそも持っている方法論であるところの、「わかりやすい」、「構造化された」、「視覚的な」、「段階的な」というやり方が、広汎性発達障害にお悩みの方々にとっても非常に役に立つという感じがあります。

滋賀・福井のカウンセリングルームです。カウンセラーが認知行動療法を用いてストレスや対人関係の悩みに面談します。

……これさぁ、読んで笑っちゃったよ。

現在のところ確立したものではありません。が、非常に役に立つという感じがあります

ってなんやねん!

でも諦めずにもう少し調べてみたら、今度はもっと具体的なものが出てきた。

行動療法は、ADHDの治療では主に子供を対象に行われます。ADHDの子どもは、障害の特徴からしばしば好ましくない行動をとり、親を困らせることがあります。例えば、公園で遊具の順番待ちが出来ずに友達とトラブルを起こしただとか、何か気になるものを見つけて突然道路に飛び出すなどといった行動です。しかしこのような行動は本人が意識して行っている者ではないため(3)、親が感情的に叱ったり、あきらめて放っておくなどの態度をとると、ADHDの子どもはより反抗的に同様の行為を繰り返してしまいます(4)。

そこで行動療法では、ADHDの子どもに対して何が社会的に好ましい行動で、何が好ましくない行動なのかを理解させ、正しい方向に導いていくことを目標にプログラムを行います(5)。

「叱る」と「褒める」をうまく使う

ADHDの子どもに好ましい行動がどのようなものかを教えるときには、「できなかったことを叱る」よりも「できたことを褒める」ほうが大きな効果があります。行動療法では、ご褒美などを利用して、「好ましい行動をとるといいことがある」という風に条件付けすることで子どもを正しい方向に導いていきます(3)。

(中略)

このようなことを日常の問題とされている場面で繰り返し行うことで、好ましい行動がどんなものなのかを教えていくのです。こうして「好ましい行動=褒められる、ご褒美がもらえる」と行動に対してプラスのイメージを与えることで問題行動を改善していきます。これを正の強化と呼びます(6)。

なるほど、これだと確かに実践しやすいかもしれない。それにこれがうまく行けば、こども本人も少しは生きやすくなるかもしれない。でもそれを認めたとしてもなお言いたいことは残る。それは、

でもこれって結局、「あなたが社会に合わせろ(治せ)!」ってことであって、「社会があなたに合わせ(歩み寄り)ます」ってことでは、ぜんぜんないよね

ってことなんだ。

だからこそ、生まれたばかりの赤ちゃんの脳をスキャンしてでも、一刻も早く「リスク」を見つけようとするんでしょう?

そしてこの問題意識を持ったまま、最初のニュースに戻ってみると、そこから見えてくる景色から、僕は眼を背けることができないんだ。

これは結局、「ひとつの流れ」につながっている

最初のニュースでは、

「遺伝子を改変して知能指数を高める」といった取り組みについては現在は行うべきではなく、遺伝子編集を認可する領域について明確に線引きする必要がある

とは言っているものの、結論としては

ある一定条件のもとで人間の生殖細胞系を編集することは、重大な疾病を防ぐことにつながるため許可されるべきである

となっている。

そしてこの「重大な疾病」っていうのは、実のところ個人的な要素である以上に社会的な要素でもある。

っていうことはさ、将来

行動療法でも改善の見込みがないような発達障碍については「重大な疾病」と見なす

とされたうえで、脳スキャンとかの技術が発達して

発達障碍は生まれる前にほぼ完全に予測可能です

っていうことになったら、「発達障碍」はこの世界から消し去られるんじゃないの?

しかもそんな未来は、もう既に現実化し始めてるじゃないか!そう、「出生前診断」っていうかたちでね!
前に、って書いたように、僕は今日本でもどんどん行われている出生前診断には、とても怖さを感じているし、せめてもう少し、慎重に考えてほし...

だから僕はせめて、怖いものは怖いと言うし、イヤなものはイヤだと言う

だから現時点での社会の流れは、やっぱり前々から気づいてたとおりの「この方向」に進んでるんだと思う。しかもそれは、

自分は少数派で、相手のほうが多数派だ

っていうことを認めるってことだ。そしてそれを考えれば考えるほど、無力感の影が忍び寄ってもくる。

でもだからこそ、僕はせめて、怖いものは怖いと言うし、イヤなものはイヤだと言う。だってそれが、生きてるってことだからだ。そして僕はこれからも生きていたいし、あなたにも生きていてほしいからだ。

それに心は、「行動」によって表される。そして彼らは、実際に行動してる。だから彼らは、本気なんだ。だから僕もこれからも、本気で生きるんだ。

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