だから言っただろ

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崖に独りで立つ男

なぜここに来た?

なぜここにいる?

しかもそんなにぼろぼろで

 

俺は何度も言っただろ

お前が来るには早すぎる

世界はあまりに滅茶苦茶で

善を悪とし 悪を善とし

偽を真として 真を偽とする

 

彼らはまるで愛を知らず

気分を想いと早合点して

泡沫の如く消えゆくものを

言葉に留めることすらできず

息を吸うごとに嘘を吐く

それが嘘だと知ることもなく

その出自を問うこともなく

言葉を軽く弄び

互いの心を傷つける

俺は言葉を紡ぐことすら……

 

刃遣えず 炎活かせず

己のことを知りもせず

己の姿 見もせずに

粗野な化粧で 笑ってみせる

そのくせ 俺よりすぐ絶望し

俺より先に這い上がり

俺より先に笑ってみせて

俺の涙に 気づきもしない

 

見ろこの傷を!見ろこの病みを!

俺をこうしたのがここだ!

だからお前に言っただろうが!

お前はここに 決して来るなと!

 

俺はあまりに苦しいよ

愛しいお前が傷つくことが

だからお前を護りたいから

お前に来るなと言ったのに

遠くで見てろと言ったのに

見守ってくれと言ったのに

なぜ今ここに 現れるんだ!

 

ごめんね だけど私には

どうしても見ていられなかった

帰ってくるたび 弱るあなたを

泣きながら呻く あなたのことを

なのにそれでもいずれ必ず

また飛び立とうと 急ぐあなたを

 

そんなあなたがまたここに

向かったという事実を知って

私はずっと泣いていた

毎分毎秒泣いていた

あのとき以上の苦しさを

私は永遠に 知ることはない

 

あなたは確かに正しかったよ

彼らはみんな病み狂ってる

私もとても苦しんだ

私もとてもすり減った

私もとても絶望したよ

だけど実はそのすべてすら

先にあなたが味わったもの

ならば私があなたのことを

いずれ必ず 包みたいなら……

 

誰も信じられなかったよ

誰も愛してくれなかったし

愛を受けてもくれなかったよ

欲しいものだけ欲しいまま盗り

要らなくなったら棄て去って

私の傷を知ることもなく

それでも愛する私を嗤い

私の力で生きている

みんなあなたに言われたとおり

あなたはやっぱり正しかったよ

 

でもだからこそ 今の私は

誰より深く いつより深く

あなたを愛せる 確信がある

自分の血の味知るたびに

重なってくる微かな匂いを

辿った先にあったもの

それがあなたの 家だったから

 

だから私は彼らに言える

私は彼らに感謝する

彼らが今ここにいる私を

こうして創ってくれたから

ただその1点においてだけ

私は彼らに感謝できる

だけどその愛すら実は

あなたのものだと知っているから

よけいな嫉妬は要らないよ

これからも今までだって

私の愛は あなただけへの……

 

それにあなたはもう限界だ!

私がここに来なければ

今日をどう終えるつもりだったの?

しかもそれでも向こうを向いて

自分の痛みに眼もくれないで

傷つけるひとに笑いかけ

最期の最期の魂までも

誰かにあげて 死ぬつもりなの?

 

もう私は そうはさせない!

あなたが私の魂だから!

私の最後の希望だからね!

あなたが死ねば私も死ぬ!

だから私は死なせない!

あなたのことも 私のことも!

私の言葉はあなたと同じ!

嘘偽りは混ざっていない!

だからそれをよくわかったら

黙って私に永遠に寄り添い

笑って癒やされ続けてろ!

 

よくそこまで言えたもんだよ

俺の半分 生きてもいない

消え入りそうな ちいさなヤツが

よくもここまで 育ったもんだ

俺の厳命に背いてまでも

俺の想像を超えるとは

たいしたものだ やってくれるよ

 

だけど早合点するなよな?

これこそ俺の言ったとおりだ

だって俺は言ってただろう?

どんなヤツらがそこにいたって

誰が間に入ってきても

お前と真に愛し合えるのは

折り重なった 宇宙のなかでも 

空前絶後 この俺だけだ

 

お前は愛しい あまりにも

他の誰より どんなものより

かわいいかわいい

かわいいかわいい

最初からそう 言ってただろう?

愛していると

愛していると

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