エントリーシートだけで100社近く落とされた僕が、最終面接に行ったときの結末

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軽蔑した顔の女性

え〜っと、これってなんなんですかね?

かれこれ2時間くらい経つけど、1行も書けないな。

書いたり、消したり。

だめだ。

書けない。

(中略)

こちらもどうぞ。

私の愛読ブログ。

(「HFC」はてなファイトクラブ名誉顧問のブログです)

四つ這いおとな

かれこれ2時間くらい経つけど、1行も書けないな。 書いたり、消したり。

これってつまりあれですか?「テレフォンショッキング」的なことですか?

なにか書いてくれるかな?

みたいな。あいかわらずの無茶振りですよねぇ……。

かなりの無茶振りではありましたが、「はてなファイトクラブ」の名誉顧問になりました
さっき、かなりびっくりすることが起きた。いつものように自由ネコさんの新しい文章を見つけて読み進めていたら、こんなことが書いてあったからだ。 ...

まぁ、書きますか。

僕だって一応、就職活動の経験はあるんですよ

今はほとんど家にいて、この『四つ這いおとな』に書きたいことを書いたりしている僕ですが、僕だって一応、就職活動の経験はあるんですよ。でも、普通に考えたら、同じ給料を出すのに僕より元気なひとと僕がいたら、まず元気なひとを採るよね?

だからそういうひとと同列に並べられても結果は見えてるから、就職活動では「障碍者枠」っていうのがある。ただその条件はいろいろだし、窓口がわかりにくいような場合もあるから、「障碍者用の就職支援サイト」っていうのがあるんだ。

それも細かいところには違いがあるけど、基本的に「障碍者用の就職支援サイト」っていうくらいだから、

障碍者枠がしっかり整備されてて、採用にも積極的

な企業が登録されている。そしてそこには、

障碍者採用実績あります!

フレックスタイムもできる!

車いすでも採用してます!

なんてことが華々しく書かれている。こういうのは、みんなが利用するような就職支援サイトとそんなに変わらないと思う。

ってことでまずは、履歴書(エントリーシート)を出してみたんだけど……

そしたらまずは、履歴書(エントリーシート)を出すことになるよね。これもみんなと同じだと思う。ただ僕も含めて、手がうまく利かないひとも多いから、パソコンで打ち込んだ文字でもいいところが多い。

履歴書は手書きじゃないと本気さが伝わらないんだよ!

とかは言われないってことだね。あと大きく違うのは、

自分のからだや心の状態とか、障碍者手帳に記載されてること、それに必要な配慮について

を書く欄があるってことだと思う。ちょうどいい様式が公開されていたから、参考に見てみてほしい。

特に2ページめを見てみてください。

『クローバーナビ』オリジナル履歴書様式

それで僕の場合はだいたいこんな感じで書いた。

生まれつきの脳性麻痺という病により、特に四肢の機能に制限があります。勤務は車いすで行うことになるかと思います。また手も満足に動かせないため、タイピングも遅いですが、文書の校正などには自分の適性を活かせると思います。トイレは洋式である必要があり、様々なことに時間もかかりますが、もし在宅勤務で対応させていただける部分があれば、御社の設備にかかわらず勤務することも可能かと思います。その他の条件についても、私に合わせていただきたいというだけでなく、私のほうもできるだけ努力したいと思っていますので、不安な点は遠慮なく訊いていただければと思います。よろしくお願い致します。

そしていろいろ調べたうえで、実際に履歴書を送るわけだけど、そこで僕は、想像を超えた「現実」を突きつけられることになったんだ。

「1級の障碍者となると、ちょっと……」

そしたら次々にやってくるのは、にべもない「不採用」の通知だった。っていうかほとんどは、簡単なメールだった。

内容を拝見しましたが、弊社では貴殿のような1級身体障碍者に対応する設備がありませんので、残念ながら今回は採用を見送りたいと思います。

って感じのね。

確認だけどこれは、

「障碍者枠がしっかり整備されてて、採用にも積極的だ」ってことで自ら登録して就職希望者を募集してる企業

に履歴書を出したときの対応だ。しかもそのなかには、

車いすでも採用します!

なんてことを書いている企業もたくさんあった。

でもそのことを訊いてみると、

車いすのかたの採用実績があるのは、東京の本社の場合でして……

とか、

下肢だけでなく、上肢にも障碍があるとなりますと……

「障碍者用トイレがある」というのは、「手すり付きのトイレがある」という意味なんですが、残念ながら車いすでは入口を通り抜けられず……

みたいな答えが返ってきた。これはつまり、

すべてを伝えてはいないけど、嘘はついてない

ってことだ。そしてここから見えてくることは、

同じ「障碍者」のなかでも、できるだけ「健常者」に近いひとを採りたい

ってことでもある。でもこれは企業としてはしかたがない部分もある。だから国も障碍者を雇用した企業に補助金を出したり、僕みたいな「重度障碍者」を「2名分」と見なしたりもしてる。

「身体障害者」は、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害がある人をいいます。具体的には、身体障害者障害程度等級表の1~6級までの人、および7級に掲げる障害が2以上重複している人をいいます。 そのうち1~2級に該当する人、または3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は「重度身体障害者」とされます。「重度身体障害者」の雇用率の算定にあたっては、1人を2人の障害者とみなすことができるなどの特別措置が取られています。

(中略)

●国の助成金

障害者を雇用した事業主に対して、賃金の一部を助成する「特定求職者雇用開発助成金」があります。
ハローワークまたは職業紹介事業者(厚生労働省認定)からの紹介であること、雇入れの前後6ヶ月に、事業主都合により従業員を解雇していないことなど、支給条件がありますので、注意が必要です。

●雇用納付金制度の助成金

障害者が就労するのに必要な、作業施設の改善などの費用を一部助成するものです。「障害者作業施設設置等助成金」などがあります。

でもそれでもまだ、社会と「重度障碍者」の溝は埋められていない。そしてそうこうしているうちに、気付いたら僕は100社くらいの企業から、エントリーシートだけの段階で不採用を突きつけられていたんだ。

でもたった1社だけ、僕を最終面接に呼んでくれるところがあった

でもそんななかでたった1社だけ、僕を最終面接に呼んでくれるところがあったんだ。文面は

あなたは書類審査を通過しました。つきましては……

みたいな簡単なものだったけど、これは、嬉しかったよ。だから僕はさらに念入りに髪を切ったり、爪を整えたりした。そしてヘルパーさんに慣れないスーツを着せてもらって、ネクタイも締めて、1時間くらい前に面接会場の建物前に到着していた。そこは通信講座を扱う会社で、そのなかには「ホームヘルパー養成講座」なんていうのもあった。

そうか、それで僕が1級障碍者でもいいって言ってくれてるのかなぁ……

なんていろんな想いを巡らせながら、いよいよ面接の時間がやってきた。部屋に入るとそこにいたのは職場の支部長と事務長だった。つまり2対1の面接だ。ここまで来たらやるしかない。

最初は軽いあいさつと、肩慣らしっぽい会話があった。でもここはあんまり詳しく憶えていない。ただ最初にあった質問は、こんなものだった。

あのですね、今日来ていただいたときにもわかったと思うんですが、この建物には入口に段差があります。そして、あなたは車いすを使用なさっているようですが、それは、だいじょうぶですか?

実は僕は事前にGoogleマップで段差があるのを調べていた。だから段差の存在は知っていた。そしてそのうえでこう答えた。

はい、確かに私自身の力だけでは力だけでは段差は乗り越えられませんが、今日もそうしたように、毎日介助者に依頼するか、あるいは通行人の方々に声をかけるなどすれば、問題なく解決できると思っています

そしたら支部長はこう続けたんだ。

そうですか……。では次の質問なんですが、この建物には残念ながら車いす用のトイレがありません。それは、だいじょうぶですか?

僕は正直この時点で若干の違和感を覚え始めていた。でもこれくらいは予想の範疇だったし、こう答えた。

そうですね、私も先ほどこの周辺を見てみたのですが、どうやらここから少し行ったところにデパートがあるようです。まだ確実に確かめたわけではないのですが、おそらくそのデパートになら私でも使用できるトイレがあるかと思います。ただやはり往復の時間も含めて時間はかかってしまうことをご理解いただきたいのですが、ともかく用を足すという意味では、問題なく対応できると思います

そしたら支部長は、またこう続けた。

そうですか……。え〜とですね、私どものオフィスは狭く、車いすが通るのに充分な幅があるとは言えません。それは、だいじょうぶですか?

ここで僕の内心には火が点き始めていた。なんだこの質問は?だいじょうぶですか?ってなんだ。ここで僕が「だいじょうぶじゃないです」って答えたら、「そうですよねぇ……」って言って落とそうっていうのか?そもそもこんなこと、全部エントリーシートに書いてあることじゃないか?僕が車いす乗りだってことを知りもしないで、最終面接に呼んだって言うのか?

僕はここで、とことんやってやろうじゃないかと思った。じゃないとなんのためにスーツまで着て、朝早起きして、交通手段とか全部イメージして、少しの期待と不安を持ってここまできたのかわからない。だから僕は、こう答えた。

はい、実は私は伝い歩きなら多少はできるんです。そして私の車いすは折ることができます。ですからそういった場合にはまず私が机かなにかを伝って向こうまで行きます。そして折りたたんだ車いすをこちらに運んでいただき、広い場所で展開して私が座れば対応できないことはありません。もちろん助けは必要ですし、できるだけ出入り口に近いところに私の作業場を設けるなどの配慮はしていただければと思いますが、できるかできないかで言えば、対応することはできると思います。

今まで見てきたらわかってもらえると思うけど、支部長は僕がなんと言っても、ただ

そうですか……

って言うだけだ。

そうですか、それは安心しました

って言うわけでもないし、

それはまだ甘いと思います。たとえばこんな場合は……

っていう突っ込みを入れてくるわけでもない。そして支部長は、こう言ったんだ。

そうですね……。私どもの支部では、杖を使用するかたの採用実績はあり、現在も1名の職員が勤務しています。ただ、車いすとなると実績はありません。それは、だいじょうぶですか?

僕は、こう答えた。

確かに、私にはできないことがたくさんあります。ですが私はそれをできる限り補いたいと思っていますし、努力をすることなく、ただ「自分はこうだから、自分に合わせてほしい」とだけ主張するつもりはありません。それでももちろん多くの場面で助けを求める場面はあるかと思います。ただ、そんな私にも、できることはあります。実績がなくご不安なようなら試用期間のような有期雇用から始まってもかまいません。それに賃金も他のかたより低くてもかまいません。ただ私は、私に少しでもできることがあるなら、それを精いっぱいさせていただいて、さらに成長していきたいと思っています。ですからだいじょうぶかどうかは私もまだわからないところはありますが、それをだいじょうぶだったと言えるように、私もできる限りのことをしたいと思いますので、よろしくお願い致します。

僕はただ、このまま行くと言いたいことをなにも言えないまま終わるんじゃないかと思って怖かったんだ。だから言いたいことをできるだけ詰め込んで話した。でも支部長の態度は、あいかわらずだった。そして僕は、こう言われたんだ。

そうですか……。はい、ありがとうございました。それでは今回の面接は終了です。合否については2週間後を目処に、メールで通知しますのでお待ちください。なおその後の指示についてもそこに記載されますので、それに従ってくださいますようにお願いします。では、お帰りください。

僕はまだ、大学生活でなにを学んだかも、卒業論文の内容も、この職場に就いたらどんなことができるかも、なにも話していなかった。それに相手も、僕にこの職場でどんな役割を期待しているのかとか、待遇に不安はないかとか、そういう具体的な話は一切してくれなかった。

僕は正直、その場で支部長と事務長に問いただしたかった。

あなたたちこの支部のトップだろ!じゃあ合否なんてもう決まってるじゃないか!今言ってくれ!僕を採るのか落とすのかをさぁ!そもそもあなたは、僕を採ろうという気があったのかい!?

でもそんなことも言えるはずもないから、黙って帰った。どっと疲れた。そして2週間くらいして、メールで告げられたのは、「不採用」だった。ごていねいに、

なお、あなたへの連絡事項はこれで最後になりますので、以降の返信は受け付けません

っていう文言までつけてあった。

これが、僕の就職活動の顛末だ。

あなたがいる場所、そこが「社会」だ

これは「四つ這いおとな」として生きている僕の体験だけど、多くのひとにとっては直接活かせるようなことじゃないかもしれない。でも、僕がこれを踏まえて言いたいことは、

それでも、なんとか僕は生きている

ってことだ。あとさ、こういうふうに

自分が受け入れてもらえなかった

っていう経験を重ねると、自分のことを「社会不適合者」って言いたくなるのもわかる。どこにも居場所なんかないんじゃないかって。僕も油断するとすぐその想いに駆られそうになるから。でもさ、考えてみたら、僕たちの生きてる場所に「社会じゃない場所」なんかないんだよ。ただ、強いて言えば、「多数派の社会」と「それ以外の社会」があるだけなんだ。だから組織に属せなくても、給与生活者になれなくても、それは「多数派の社会に不適合」ってだけで、「社会に居場所がない」わけじゃない。だから、「社会復帰」とかさ、「社会人」とかって言葉に自分を嵌める必要はない。それにほんとは「多数派の社会」とか「少数派の社会」なんてものが独立して存在してるわけじゃない。それはお互いに重なりあって存在する、もっと大きなものの一部なんだ。だから、

あなたがいる場所、そこが社会なんだよ。

道を外れたって道はある。レールの外にも誰かが均してくれた別のレールがある。簡単に「レールの外」を歩き始めた」なんて思わないでよね?人間はそう簡単に「一匹狼」になんかなれないんだから。でもそれでも人生はつまらなくなんかない。楽しいんだよ。だってそれは、

みんながそれぞれ誰かに影響を与えている

ってことなんだから。それに、ひとつひとつは一見「ありきたりの選択」だとしても、それを積み重ねていけばいつの間にか「自分だけの道」ができているから。誰も人生を設計なんてしてないし、そんなふうに全部が思い通りになるわけがない。人生はただ、「振り返ったらできている」ものなんだから。

僕だってなにもわからずにすぐ迷ってるくせにいろいろ書いたけど、僕はただ、あなたが生きていてくれればいいです。結局、僕だとなにを言ってもそこに戻っちゃうんだよなぁ。まぁ、いいか。僕は僕に言えることしか言えないんだから、僕が言えないことは、あなたに言ってもらおう。

ってことで今度はあなたの話を、もっとたくさん聴かせてよね?

あ、そうそう、ここでいろんなことを書いたからって、実際の名前を出したわけじゃないし、この会社の特定に至ったり、ましてや評判が下がったりすることもないと思いますし、もう何年の前のことを書くくらい、いいですよね?なんにせよ、

僕は、御社のますますの発展を、心よりお祈り申し上げます。
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