「障害者の親は一生反省してもらってけっこう」。内海聡さんがこれを本気で言ってるなら、僕も本気で反論する

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赤ちゃんの握り拳

「スルースキル」って大切だなぁとは思う。特に今みたいなネット社会になって、いろんなひとのいろんな意見が山のように押し寄せてくるような状態ならなおさら、自分と意見が違うひとたちにいちいち全部反論していたらきりがない。それに、相手が明らかに間違っている意見はいずれ必ず修正されるし、そうやって僕たちは少しずつ賢くなっていくはずだから。

でも、今はあまりにも情報が多いし、みんながその情報を精査する時間や力、それに関心を持ってるわけじゃない。だからそのなかで結局は

「権威と影響力」を持ってるひとの意見が他のひとにも染み込んでいく

っていうことだってよく起きる。そしてその結果、自分にとって居心地の悪い環境が作られていくかもしれない。だからやっぱり、言いたいことは言っておかなくちゃいけない。

それが自分にとって大切なことなら、相手が誰であっても、自分にとっては言うまでもないと思えるようなことでも、スルーしちゃいけないこともある

ってことだ。

相手がまじめな信念で言ってるなら、こっちだってまじめに向き合わなきゃいけないよね

前置きはこのくらいにしておこう。それで僕は今から僕にとってどうしてもスルーできない意見に向き合ってみようと思う。それがこれだ。

まず最初に言いたいことは、僕はこんな意見を今までにも何度も言われてきた。だからもしこれをどこの誰ともわからないようなひとが言ってるんならまだ無視できたと思う。でもこの内海聡さんは仮にも現役の医者だし、本もたくさん出している。それにこの意見にはフェイスブック上で3000件近い「いいね!」が寄せられている。しかも内海さん本人はこれを、

私は死ぬまで訴え続けるでしょう

なんて言ってるんだから、少なくとも彼は彼なりに本気なんだろう。それに僕はこれを初めて見た1週間くらい前からどうしてもモヤモヤが収まらなかった。だったらもう、こっちも本気で反論するしかないだろう。

まず内海さんのこの話には、明らかな間違いがある

ただいきなり感情的な話を持ち出してもしかたないから、まず内海さんのこの話に含まれる間違いについて指摘するところから始めたい。

まず知っておかなばならないことは自閉症であれ知的障害であれ肉体障害であれ、先住民には新生児障害や用事障害が全くといっていいほどみられないという点です。ほんの100年前の日本でも障害といわれる子などほとんどいません。これは為すべきことを為しているからです。

ここで言う「為すべきことを為している」っていうのはそのあとの、

妊娠するはずの女性に対して半年以上前から最も栄養素の良い食品を与えます。そうすることで母体の栄養状態などを良くして、元気で民族を維持してくれる子どもを産んでもらう

っていうようなことを言ってるんだと思うけど、その影響がまったくないとは言えないにしても、これはそれ以上に、

医療が発達していない社会では、弱いこどもは助からないで死んでしまう

っていうことだと思うよ。それに、

ほんの100年前の日本でも障害といわれる子などほとんどいません。

だって?それは「食毒」や「社会毒」が少ないからだって言いたいの?だったらそれは違うよ。だって縄文時代にだってポリオに罹ったひとはいたし、そのひとも他のひとと同じようにそこから数十年間生きたってことがわかってるんだよ?

縄文時代後期の墓、ポリオに侵された人骨です。肢体が不自由なまま少なくとも数十年間介護を受けて生きていたことがわかります。
ポリオでも20歳まで生存 縄文時代、家族が介護? 文化財企画「先人たちのカルテ」「病とともに」 記事:共同通信社 提供:共同通信社 【2008年10月27日】  1966、67年に北海道洞爺湖町の縄文時代の入江貝塚で出土し、「入江9号」と名...

それにこれは古代日本の「律令」にも表れているし、その時代時代の受容と排斥(差別)の変遷のなかで生きてきた障碍者たちの足跡を無視するなんて、あまりにも乱暴だと思わない?

 網野善彦氏の「日本の歴史をよみなおす」という文庫本を読んだ。その中の、「畏怖と賎視」の章で被差別..

だからさ、こういう基本的な情報をよく吟味したうえで考えてみてほしいと思うんだ。もちろんその信憑性を疑ってもいいけど、これだけの検証を乗り越えてきたものを覆すのは、かなり難しいと思うけどね。

障碍者の親はもう充分に、自分を責めてるよ

あと障碍者の親は、もう充分に自分を責めてるよ。僕の家族だって妊娠中の遠出が悪かったのかとか、食べ物とか精神状態が悪かったのかとか、生まれた場所や病院選びが悪かったのかとか、いろんな理由で自分を責めてたよ。それは僕の家だけじゃなくて、だから養護学校時代にも、結果としてひとりっ子だったり、末っ子だったり、両親が離婚してしまうような家庭もたくさん見てきたよ。そしてそういうストレスは自分たちにも連鎖してたし、それは自分のなかにもあったし、今だってないとは言えないよ。それにそういう弱さにいろんな「思惑」をぶつけてくるひとだっていっぱいいたし、それでまた苦しめられたりもしたんだよ。

「あなたの魂は穢れている」と言うひとも、「高貴で美しい魂だ」と言うひとも、結論は同じだった
前にでも少し書いたことだけど、僕が物心ついて物心ついた4〜5歳の頃にはもう、どこからか僕の話を聞きつけたたくさんの「宗教関係者」が僕...

でもそういう葛藤のなかでもがいて、苦しんだ末に行き着いた「できることを活かそう」っていう姿勢を、

もし本当に反省できる親がいるとしたら、決して障害を認めるとか個性であるとか、正当化を繰り返したりとか言い訳したりとか、障害が個性であるという業界がふりまいた嘘など見抜き、決してそんなことは言わないのです。

なんて言うのはもう完全な暴言だとしか言えないんだよ。

それにこれに反論したひとに対する

地獄でも言い訳してな。

なんて一連のやり取りは、もう誰が見たってひどすぎるよ。

あなたのような地位にいるひとだからこそ、もっと真剣に考え続けてほしい

でも内海さんは僕よりも圧倒的な影響力があるし、医者になれるだけの知性もある。それに実名顔写真付きで自分の意見を言えるだけの覚悟と信念もあるんだろう。でもだからこそ、自分の言っていることの意味をもっと真剣に考えてみてほしいんだ。

僕も真剣に考えて、そのうえであなたの意見のほとんどには反対している。でも僕だって、農薬や添加物が人体にまったく影響がないとは思わないし、「生活習慣病」っていうのがあることも含め、自分の選択で変えられることはたくさんあるとも思う。けどその要素をすべて検討しても、最後には確率の問題になる部分もあるんだよ。

これは断言してもいいけど、

あなたがもしあなたの基準で「健康」だと思う女性を100人連れて来て、それぞれの女性との間にこどもを授かったとしても、そこには数人の「障碍児」が生まれる

んだよ。そのことをよく考えてみてほしい。そしてその割合は、どんな社会でも少なくとも5%にはなる。そうじゃないとしたら、かつてのイヌイットや日本人にも見られたとされるように、「選択的な間引き」が行われたって可能性を考えなきゃいけない。

障害者が存在しない社会(特異な人口構成)

イヌイットは自分たちが暮らす生態系の天然資源に過度の負担を掛けることの回避策として自ら人口構成を管理してきた。彼らの社会では人口構成において障害者、双子、女性の割合が他の社会に比べて極端に低くなっていた。これは出生時に選択的な間引きが行われていたためである

間引きと神隠し

栄養失調で自然死するだけでなく、他の人間の食べ物を確保するために、これ以上子どもを育てられないと判断されると、堕胎はもとより7歳以下の子どもは間引かれることが頻繁にあったのです。

また、生産性の低い人間=障害者だとわかると、やはり7歳までに間引くことが掟になっていた村も少なくありませんでした。

掟に逆らって、養っていけない子や障害児を間引かずにいると、「神隠し」として強制的に連れていかれ、処分されました。

っていうか、その間引きはかたちを変えて、今でも続いてるんだよ。ねぇ、でもまさか内海さんが言う「為すべきことを為す」っていうのに、これは含まれてないんだよね?

マタニティ・ゲノム。出生前診断の技術はますます進化していってるけど……
前に、って書いたように、僕は今日本でもどんどん行われている出生前診断には、とても怖さを感じているし、せめてもう少し、慎重に考えてほし...

だから僕だって本気なんだよ。それは僕の立場から来る感情の影響もあるのも認めるけど、あなたが自分の意見に人生を懸けるように、僕だって人生を懸ける。ただし、今の考えに執着するというよりも、真剣に考え続けるから。でも変わらないところは変わらないと思う。そして率直に言えば、僕は内海さんのところにも障碍児が生まれたらいいのにと思っている。これは養護学校時代の知り合いともよく言ってたんだもん。

偉いひとのところにもっと障碍児が生まれれば、社会は変わるのかなぁ?

ってね。これは悪意で言ってるんじゃないんだよ。それにあなたのこどもがどんなこどもでも、僕は僕なりに助けるし、かわいがるから。

だけどもしほんとにそんな日が来たら、あなたも少しは、反省してね?

コメント

  1. 私も非常に同意して、どうにも許せなくて悶々として、個人的に書かせていただきました。

    無断でこちらの記事に言及しております。すみません。

    でも自分ではこれだけ冷静にきちんとまとめていける自信がなくて、

    ですので、こちらの記事を紹介させていただきました。

    気分障害だから、どこかで吐き出さないと冷静になれない、と思いました。

    精神科の方でも問題の多い内海医師です。

    死ななくてもいい人が自死を選ぶことはとても辛いことです。

    そちらの意味でも許せない人です。

    • はるうさぎさん、こんにちは。

      文章を紹介してくださって、こちらにコメントもくださって、とても嬉しいです。

      ありがとうございます。

      向こうのほうがはるかに影響力もあり、かつ賛同者もたくさんいるというなかで書くのには神経を遣いましたが、少しでも誰かにしっかりと考えてもらえるきっかけになればと思いました。

      その結果、はるうさぎさんとも知り合えてよかったです。

      これからも、僕は僕なりの立場から、いろいろと考えていけたらと思います。

      今後とも、よろしくお願いします。

      暑いなかですが、からだと心をいたわって、お互い少しでも穏やかに過ごせることを、願っています。

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