妊娠28週で生まれた僕が『コウノドリ』を読んで感じたこと

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保育器のなかの赤ちゃん

昨日、僕が『ブラックジャックによろしく』を読んで感じたことを書いた。

超未熟児として生まれた僕が、『ブラックジャックによろしく』から家族の気持ちとあり得た可能性を想像して思うこと
今までにも何度も書いたことだけど、僕は医学的には「脳性麻痺」という状態で生きている。そして僕がこの状態になった直接の原因は、僕が生まれたとき...

ただそこで紹介したあの作品の第3巻が出たのは今から10年以上も前で、それは今の状況とは違う部分も多いだろう。

その『ブラックジャックによろしく』の別の章、「精神科編」も当時からかなりの話題を呼んだんだけど、それについて実際の精神科医の視点から感想を書いた文章もある。

極めてリアルに描かれた医療マンガ、『ブラックジャックによろしく』精神科編。その中にも少しですが、「ウソ」とは言えないまでも、大げさ、紛らわしい表現はあります。前回に引き続きそのいくつかをご紹介します。

でもそんな医療の最新の状況を踏まえながら、いろんな現実を考えさせてくれる、僕の大好きな作品がある。それが鈴ノ木ユウさんが描いて、今も『週刊モーニング』で連載中のマンガ、『コウノドリ』だ。

去年ドラマ化もされた、大人気マンガ

この作品は、産婦人科医とジャズピアニストの顔を併せ持つ鴻鳥サクラを中心とする医者とその病院に来るいろいろなひとたちを描いた作品なんだけど、これはもともと2012年夏に「短期集中連載」として掲載されたものだったのが、あまりの反響の大きさに2013年の2月から週刊連載になったくらい、人気になったものだ。こういう事情は、『モーニング』の公式サイトにも書いてある。

昨夏の短期集中連載(>>>関連ニュース)が大反響を呼んだ産科医とその医療現場の物語、鈴ノ木ユウ『コウノドリ』

再登場を待ち望む皆様の熱い応援の声におこたえして、ついに来週2月21日(木)発売の「モーニング」12号より完全週刊連載がスタートします!

これに先駆けて当サイトでは、その大反響により連載化を決定づけた短期集中連載分4話を全てWeb公開いたします! 未読の方も、再読して感動を新たにしたい方も、スマホでも読めるWebコミックですのでお気軽に触れてみてください!

2013/02/14 12:00

だけどこの時点ではまだ僕はこの作品を知らなかった。それが去年、2015年にこれがドラマ化されたことをきっかけにこの『コウノドリ』を知った僕は、さっそく原作の第1巻を読んでみた。そしてその世界や絵の感じ、それになにより第1話(単行本版)の最後に書かれていた

産まれてくる赤ちゃんが全て 望まれた命だとは限らない

ただ この場所で働いている人たちは皆 産まれてきた全ての赤ちゃんに

「おめでとう」と言ってあげたい

そう思って働いている

っていう言葉に胸を打たれて、それからずっと読むようになったんだ。

僕の生まれた妊娠28週のリスクは、今はもうかなり下がっている

昨日の文章にも書いたように、僕は妊娠28週で生まれた。それは当時としては「99.9%死ぬ」っていうくらい危険なことだったんだけど、今はそうじゃない。それは『コウノドリ』第14巻のこんな言葉を見てもわかる。

28週という週数は出生後ほぼ後遺症なく育つ週数です

もちろんそれはそれからの懸命の処置があることが前提ではあるけど、作品のなかでもその子は元気な女の子として生まれた。つまり、2016年の今では、妊娠28週で生まれることが持つリスクは、僕のときよりもずっと、下がってるんだ。こうした変化がわかるのも、僕がこの『コウノドリ』を読んでよかったと思う理由だ。

それに、この主人公にはモデルがいる

しかも、この物語の主人公、鴻鳥サクラには実在のモデルがいる。彼は荻田和秀さんっていうんだけど、荻田さんはこないだ、NHKでも特集されていた。

しかも、鴻鳥サクラが産科医とジャズピアニストの顔を併せ持っているのはさすがに作品のなかだけかと思っていたら、実はそうじゃない。荻田さんはほんとにジャズが好きで、こんな動画も公開されている。表情は見えにくいけど、ここでピアノを弾いているのが、荻田さん本人だ。

それに今でも、兵庫県の「逆瀬川Back-Stage」っていうジャズバーなんかで、ときどき演奏を披露しているらしい。

だからこの『コウノドリ』の設定は、別に奇をてらったものではない

んだ。実際、異色であることには間違いないと思うけどね。

助けられるいのちは増えている。あとは家族と、社会の問題だ

だから、医療の技術はどんどん進歩していて、それを支える荻田さんのようなひともたくさんいる。もちろん完璧ではないし、死んでしまう赤ちゃんもいるだろう。でも実際、助けられるいのちは増えている。それだけは確かだ。そしてそれは、素晴らしいことだ。

ただ、そうやってせっかく助けられたいのちがそのあとみんなしあわせに暮らせるかと言ったら、それは別の話だ。それは自分や自分の周りを見たって明らかなことだ。まして、どの社会にも20人に1人以上の割合でいると言われる「障碍者」ならなおさらだ。だから家族は自分のこどもがそんな状態になったら、それを過度に悲観したり、「望まれない子」だと考えたりする。それに、社会のほうもそれに呼応するように「出生前診断」なんかを進めている。

「出生前診断」が拡がれば拡がるほど、社会が失っていくもの
僕が「出生前診断」というものを知ったのは、確か2013年くらいだったと思う。その頃から、もうこの話題は賛否両論を巻き起こしていたけれど、世間...
マタニティ・ゲノム。出生前診断の技術はますます進化していってるけど……
前に、って書いたように、僕は今日本でもどんどん行われている出生前診断には、とても怖さを感じているし、せめてもう少し、慎重に考えてほし...

これは僕の目線から言えば、

こどもを親に合わせようとする、こどもを社会に合わせようとする動き

に見える。でもその結果みんながしあわせになっているとは、とても思えない。だから

助けられるいのちが増えれば増えるほど、赤ちゃんが全力で生きようとすればするほど、次に問われるのは家族と社会のほうなんだ

と思う。それは『コウノドリ』のなかにも、たくさん描かれている。だから僕もあの「現場」から生き延びたいのちのひとつとしてこの作品を読み続けながら、これからもいろんなことをちゃんと考えて、表現していこうと思う。

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