あまりにも哀しいニュースを見てしまった。
鳥取県は15日、鳥取市の障害者支援施設「県立鹿野かちみ園」が、知的障害などのある女性入所者3人に対し、最長約20年にわたり、食事時などを除いて施錠した居室に閉じ込めていたと発表した。県は虐待と判断し、同園に対して施錠の中止と、再発防止策の報告などを指示した。
県によると、虐待を受けたのは知的障害のある40代女性2人、行動障害のある60代女性1人。
60代女性は他の利用者の小物などを食べる恐れがあり、予防のため平成7年の入所以来約20年間、日中の生活訓練や入浴、食事などの時間を除き、1日あたり約10時間、居室に外から鍵をかけ閉じ込めていた。
40代女性2人も、他の利用者への暴力行為を予防するためとして、それぞれ1日14時間~6時間半閉じ込められていた。室内にトイレや水栓はなかったという。
5月、関係者から県に通報があり発覚した。施錠について同園を管理する県厚生事業団は、「家族、本人の同意を得ていた」としている。
2016.6.15 12:21
最長20年、施錠した居室に障害者を閉じ込め 鳥取市の支援施設鳥取県は15日、鳥取市の障害者支援施設「県立鹿野かちみ園」が、知的障害などのある女性入所者3人に対し、最長約20年にわたり、食事時などを除いて施錠した居室に閉じ…
県立の障碍者施設ですら、虐待だという認識がなかった
それに、同じニュースを扱った別の記事を読んでみると、また新たな情報もわかってくる。
40代の女性は他人に暴力を振るったことを理由に約7年間、1日14時間施錠されていた。暴力はここ数年落ち着いていたが、閉じ込め行為は続けられていた。
鳥取・障害者支援施設:女性入所者1人を20年間閉じ込め - 毎日新聞7年と3年の人も 「異食行為」防止を理由に 障害者支援施設の鳥取県立鹿野かちみ園(鳥取市鹿野町今市)で、知的障害のある40〜60代の女性入所者3人が20〜3年にわたり1日14〜6時間半、居室を外部から施錠されていたことが15日、分かった。県は虐待にあたると判断し、経緯や背景などについて施設側から報告を求める。
5月に県東部福祉保健事務所に寄せられた通報で発覚。県厚生事業団の山本光範理事長は「家族の同意を得て行った措置で、虐待との認識がなかった。職員の研修を行うなど再発防止を徹底する」と話した。
引用元「障害者3人の居室、長時間施錠…鳥取県立施設」:『YOMIURI ONLINE』(現在は削除されている)
これによると、この女性の暴力的な行動は、数年間落ち着いていたということだ。それなのに毎日14時間もトイレも水栓もない場所に閉じ込められていて、それを「虐待と認識していなかった」と言うんだったら、あまりにもひどい、というかそれすらも通り越して哀しすぎる。そしてそれが、仮にも「県立」の障碍者施設で行われていたんだ。このことが持つ意味は、とても重いと思う。
本人、家族、そして施設の関係は、決して「対等」にはなっていない
障碍者というのは弱い立場だ。まして知的障碍者と呼ばれるような状態にあるひとは、なにかの判断をするときには実質的に周囲の意見をそのまま取り入れてしまうことも少なくない。いや、もっと正確に言うと本人だってそんなところに閉じ込められるのはイヤだったと思う。だけどそんなことを言っても、周りのひとたちに、
それはわがままでしょ!私たちはあなたのことを思って言ってるんだから、ちゃんと言うことを聴きなさい!
なんて言われてしまったら、それ以上本人はなにもできない。それに家族だって、
私たちの代わりに面倒を見てもらってるんだから……
なんて負い目を持ってたとしたら、それ以上強くは反発できないだろう。
もちろん、このケースが実際にどうだったかを直接見たわけじゃない。でも、これは僕自身が今までの実際の体験から類推できるものでもあるから、まったく根拠がないわけじゃない。その顕著な実例は、たとえばここにも書いた。

だから、僕がここではっきり言いたいのは、
本人、家族、そして施設の関係は、決して「対等」にはなっていない
っていうことなんだ。だから、いくら施設が
家族と本人の同意もあったので……
なんて言ってみても、それは理由にはならない。そしてこの場合、いちばん強い「権限」を持っていたのは施設だったはずだ。わずかな例外として、家族がとんでもない価値観を持っていて、
こんなひとは密室に閉じ込めててもいいですから!
なんて強く主張していたとしても、施設側に倫理観と理解があれば、こんなことにはなっていなかったはずだ。そしてやっぱり、このことを「虐待」だと認識していなかったという1点だけを見ても、施設側の考えかたの誤りは明らかだと思う。
基本的人権が、そして文化的な生活が、そこにあったと思う?
もちろん、施設側が単に極悪だったと責めればいい問題じゃないのもわかる。福祉業界は慢性的な人手不足だし、離職率も高い。運営だって決してラクじゃなかっただろう。それに様々な状態に置かれたひとたちにきめ細やかな配慮をしてあげる自信がなくて、「安全な場所」に入れておいたほうがまだいいという判断だったのかもしれない。
だけど、だけどだ。この国は曲がりなりにも今すべてのひとたちに「基本的人権」を認めている。そして、「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利も認めている。それは、他でもなくこの国の最高法規、憲法に書かれてることなんだよ?

それすらやらないなんて、やっぱりこの国はまだ「法治国家」なんて言えないと思うんだ。やっぱり、哀しすぎるよ。
「20年」という重みを、よく噛みしめてほしい
もういちど、このひとたちがされたことを考えてみてほしい。
ということを。20年、20年だよ。僕は正直、これを聴いて最初に「懲役刑」を思い浮かべた。じゃあこのひとの「罪」はなんだ?食べちゃいけないものを食べてしまうことか?家族や施設に全力で抵抗しなかったことか?それとも、こんな時代の、こんな国に生まれてしまったことか?
過去の時代はもっとひどかったなんてことを今言ったってしかたがない。ただ事実として、今の時代に、まだこんなことがあるということだけを、真摯に見つめたいと思う。そして僕はせめて、このことを記録しておきたい。

コメントをどうぞ
障害者施設で働いていますがおそらくは他害行為をする入所者さんじゃないですかね?
他の入所者さんに暴力を振るう人でも自由に行動させた方がいいですか?
私の働いてる施設でも当然監禁などはしませんが、それは他の利用者さんたちが被害を被る危険性を含んでいます。
ちなみに今日は他害行為をする入所者さんが他の入所者さんの部屋に入り込み散々暴れて室内をボロボロにしました。
こういう事が続くと他の入所者さんのご家族からクレームが来ます。
そうなると他害行為をする入所者さんは退所してもらうしかありません。
どうすればいいと思いますか?
だれかさん、こんにちは。
まず前提として、ここで取り上げられたひとについては、まず1人は
とあるようにいわゆる「異食」の問題によるものです。そしてあとの2人は確かに暴力(他害)行為が見られたことも事実ですが、
というところはやはり重大な問題だろうと思います。
ただこの事例は別として、実際他者に頻繁に暴力を振るってしまうようなひとにどう対応したらいいのかというのはとても難しい課題だとも思います。
ですが「どうしたらいいか」はすぐにわからなくても、「どうするのは間違いか」というのはわかるのではないかと思います。それはたとえばこの事例で見られるような
というような対応がそうです。
そういった「明らかな誤り」を避けたうえで、他のひととの関係性や施設の職員数なども考え併せてなにができるのかを考えるのは簡単ではありませんが、僕も僕なりに、真摯に考え続けていきたいと思います。
あとはひとつの参考として、『ヘルプマン!』
などを読んでみるのもいいかもしれません。
僕はあなたの施設にいるわけではありませんが、あなたのようなひとがいてくださるおかげで生きています。大変なことも多いでしょうが、心から、ありがとうございます。