怠けアリさん、死ぬなんて言わずに僕とお話ししてくれません?

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1匹の蟻

昨日、『アリとキリギリス』について考えたことを書いてみた。

『アリとキリギリス』にはいろんなバージョンがあるけど、僕が望むのはこういう世界だ
『アリとキリギリス』のお話なんて、もう言うまでもないくらい有名だ。でも今日はこのお話について、少し考えてみたいと思う。このお話のいちばん...

そこでも基本的に、

アリはコツコツまじめに働く存在

っていう観点から見ていたんだけど、どうやらそうとばかりも言えないみたいだ。

最後の1匹になった怠けアリは、働くより死を選ぶ!?

ちょっと、これを読んでみてほしい。

千葉電波大学の研究グループでは、アリ約8千匹から8割の働きアリを取り除いて怠けアリだけを抽出し、残った怠けアリの集団から仕方なく働き出したアリを1週間ごとに取り除く実験を行った。実験では6回目の抽出で怠けアリの最後の1匹が残ったが、この個体はその後も働こうとせず3日後に死んだ。

研究チームの霧切寿美子・千葉電波大准教授(快楽論)は「一見役立たずに見える怠けアリが、いざという時、集団の維持存続にとって欠かせない役割を果たすことは以前から分かっていたが、最後の最後まで働かない真性の怠けアリがいたのは新しい発見だった。ただし、働くより死を選んだこのアリは「怠け」という言葉ではくくれない別の存在として再検討の余地があるかもしれない」と話す。

僕はこれを見て、深々と納得した。あまりにもすんなり入ってきたものだから、危うくそのまま立ち去るところだったんだ。

でも、そこと同じページに

なんて「ニュース」が掲載されていたおかげで、僕もこのニュースの「情報元」にようやく考えが至ったんだ。

これは「虚構新聞社」の報道だった

それでもういちどよく見てみると、このサイトには『虚構新聞』って書いてある。

それでようやく

ってことはこれって……?

と思い始めた僕の疑問が確信に変わったのは、この注意書きを見たおかげだった。

Kyoko Shimbun(虚構新聞)について

Kyoko Shimbun News(虚構新聞ニュース)は、虚実の狭間を行き交う可能性世界の事件を報道するニュースサイトです。

当サイトは現実のニュースをパロディにした諷刺・皮肉が開設の目的であり、この記事を通じて元ネタである世の諸事象に関心を抱いていただきたいと思っております。

当然のことながら、弊社が取り上げるニュースはすべて虚構のものであり、現実の人物・事件・団体とは関係ありません。また、閲覧者を騙して喜ぶ、世間を騒がせるというような悪意も持っておりません。

まれに弊社の報道を現実のものと誤解される方がいらっしゃるようですが、冷静な判断力を持って記事をお読みになられますよう、厚くお願い申し上げます。

これで、僕もやっとこの話の「真意」を理解することができた。ごていねいに「千葉電波大学」のサイトまで作ってあるのには脱帽したけどね。

でも、やっぱりこの話には、胸に迫るものがある

ただ、たとえこれが「虚構」であることを踏まえたうえでも、やっぱりこの話には、胸に迫るものがある。それにこの話のなかの、

一見役立たずに見える怠けアリが、いざという時、集団の維持存続にとって欠かせない役割を果たすことは以前から分かっていた

っていうのはほんとの話だ。それはたとえばここにも書かれてる。これは今度こそ、「本物のニュース」だ。

コロニー(集団)の中に必ず2〜3割いる働かない働きアリは、他のアリが疲れて動けなくなったときに代わりに仕事をし、集団の長期存続に不可欠だとの研究成果を、北海道大などの研究チームが16日、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。

これまでの研究で、働くアリだけのグループを作っても、必ず働かないアリが一定割合現れることが確認されている。非効率な存在で、働かないアリがいることが謎だった。

(中略)

チームの長谷川英祐・北海道大准教授(進化生物学)は「働かないアリを常駐させる非効率的なシステムがコロニーの存続に欠かせない。人間の組織でも短期的な効率や成果を求めると悪影響が出ることがあり、組織を長期的な視点で運営することの重要性を示唆する結果ではないか」と話す。【大場あい】

毎日新聞 2016年2月17日 東京朝刊

だからこの『虚構新聞』が伝えていることは、少なくとも「実際にあり得るかもね」と思わせるくらいの説得力はあるし、ここからもう少し考えを拡げてみるのも、悪くはないんじゃないかと思うんだ。

もし最後の1匹になった怠けアリがほんとに死んじゃうとしたら、その理由は……

僕は最初に書いたように、初めてこの話を見たとき、それが「虚構」だなんて、まったく気付かなかった。そして今でも、

実際に実験してみたら、この通りになったりして……

なんて思ってしまってるところもある。そして、そんなことを考えてる自分がいちばん関心を持つのは、

なんで最後の1匹に残った怠けアリは死んでしまうんだろう?

ってことだ。『虚構新聞』の想定にあるのがなんなのかはわからないけど、見出しの「死を選ぶ」っていう書きかただと、「自殺した」とか「食事を拒否して餓死した」とか、いずれにせよ「自分の意志で死んだ」みたいに捉えられる。でもこんなふうに、

最期まで怠けアリとしての生きかたを貫くんだ!働くくらいなら死んだほうがましだ!

みたいな感じで自発的に死に向かっていったとか、働くことを断固として拒否して死んだとか、そういうことよりももっと根深いのは、「孤独」だと思う。だから、

このアリが死ぬとしたら、それは「労働」のせいじゃなくて「孤独」のせいだ

と思うんだ。

実際、孤独は僕たちを文字通り「殺す」

それにこれは別に、「突拍子もない想像」から言ってることでもない。これを読めばそれがわかると思う。

赤ちゃんに対する二つの恐ろしい実験

その人の名は、神聖ローマ帝国ホーエンシュタウフェン朝の皇帝フリードリヒ2世。多くの人体実験を行ったといわれる彼は、「教育を受けていない子どもが最初に話す言語を知るため」に、50人もの赤ちゃんを集めて実験を行ったといいます。

その実験とは、赤ちゃんに対して「目を合わせない」「笑いかけない」「語りかかけない」といった一切のスキンシップを排除して乳母や看護婦たちがお世話をするというもの。

すると赤ちゃんたちは充分にミルクを与えられていたにもかかわらず、全員亡くなってしまった、という逸話があるのです。

また、大二次世界大戦直後のスイスで、心理学者ルネ・スピッツという人が、戦争孤児55人の乳児を、最高の設備を備えた施設に入れ、ここでもまたよく訓練された乳母や看護婦が赤ちゃんのお世話をするということが行われたそうです。

しかしこの子達もまた「抱く」などの人間的なスキンシップを一切排除して育てられました。

結果として27人の子供たちは2年以内に死亡。残りの17人も成人前に亡くなってしまわれたそうです。

残りの11人は成人後も生き続けましたが、その多くには知的障害や情緒障害がみられたと言われます。

それにこれがこどもに限った話じゃないことは、これを見たってわかる。

それでは、実のところ、閉鎖環境に置かれた人間に一体何が起こるのでしょうか?

独房での生活について詳細なドキュメンタリーを制作した映像作家によると、その答えは以下のとおり。

■ 電球の「ジー」という音や、「シーン」という耳鳴りに悩まされる。

■ 時間や曜日の感覚を失う。

■ 何か音を聞くために独り言を開始する。

■ 無性に不安になる。

■ 眩暈がする。

■ 動悸がする。

■ 必要以上に汗をかく。

そして、その異様さの中、最も深刻なダメージが「精神の損傷」。それこそが、物理的な苦痛とは比べものにならないほど過酷だといいます。極度の退屈に耐え兼ね、自傷行為を始める人も少なくないそうです。幻覚やパニック発作、認知障害、強迫的思考、パラノイア……。

精神科医によると、独房に入れられた人間には、そういった様々な精神障害が極めて起こりやすくなるとのこと。

だから実際、

孤独は僕たちを文字通り「殺す」んだ

これは「虚構」でもなんでもない。そして自分自身にとっても、孤独はほんとに、あまりにもつらい。

だから、僕がすべての「怠けアリさん」に言いたいことは、

死ぬなんて言わずに、僕とお話ししてくれません?

ってことだ。

他のアリはみんな死んじゃったんだよ!

って言うなら、別にアリじゃなくてイモムシと話したっていいじゃん?

自分にできることなんてなにもないんだよ!

なんて言うけど、そんなことはない。じゃあ僕の代わりにこの文章を打ち込んでくれないかなぁ?きっとあなたなら僕の5倍は早く打てると思うし。

なんでお前のために時間を遣ってやんなきゃいけねぇんだよ!

って?それもそうだ。だったら、あなたもそういう気持ちをどっかにぶつけてみたらいい。僕だけじゃなく、もっともっとたくさんのひとに向かって。僕は、ちゃんと読むよ。

まぁ結局、僕が言いたいのはそういうことだよ。僕にたいしたことはできないし、豪勢なおもてなしもできないけど、それでも来てくれたらお茶の1杯や2杯くらいは出せるから。

あ、でもそれを注ぐのは、あなたの役目だからね?
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