障碍者は経済的に「得してる」って、ほんとにそう思う?

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天秤

今の世のなか、

毎日が楽しくてしかたがない!

っていうひとは間違いなく少数派で、ほとんどのひとはなんやかんや悩みや苦しみを抱えていると思う。そして、その悩みのほとんどは、結局「カネの問題」だったりする。

そんな状態だから、生活保護受給世帯は過去最高を更新し続けているけれど、一方で受給者に対しては風当たりも強くて、特にネットなんかだと「ナマポ」とか言われたり、「不正受給者」じゃないのか疑いの眼を向けられたり、

下手に働くより生活保護者のほうが優遇されてる!

みたいな話になってたりするようなことはよくあると思う。

「障碍者手当」をもらっている僕にとって、これはかなり切実な話だ

僕ももちろん不正受給は問題だと思ってるけど、生活保護が必要なひとは確実にいるし、そういったひとが自分自身を追い込んで最悪自殺なんかするのを耳にする度に、いたたまれない気持ちになる。けど今の社会ではみんなそれぞれがけっこうギリギリでがんばってるのもわかるから、必死に働いている自分の陰に「保護」されている存在がいるのを、妬んでしまうような気持ちになることもあるだろう。かと言って、このまま生活保護者が増え続けたら財政が破綻するし、だからと言って我慢し続けたら心が壊れるし……って感じで生活保護とかを巡る話はいつも、誰にとってもギスギスした感じが残る。

でもこういう話は、僕にとってもすごく切実な話だ。だって、僕は「障碍者手当」をもらっているから。そして、日本社会から「障碍者」として認められると、いろいろな「福祉」が受けられるのも多かれ少なかれみんななんとなくは知っているはずだ。だから、

生活保護ってズルくない?優遇されすぎじゃん!

って言うひとがいるのとまったく同じように、

障碍者っていろいろ優遇されてるよね?実際、うちらより『得してる』でしょ!

みたいなことを言ってくるひともいるんだ。でもさ、それって本気で思ってる?だとしたら、もうちょっとじっくり考えてみようよ。

僕が今もらえている「固定収入」(障碍者手当)の内訳と総額

まず、僕が「障碍者」として認められているおかげでもらえている「固定収入」の内訳と総額を考えてみる。
すると、

  • 障碍者基礎年金:2ヶ月で約16万円=ひと月あたり約8万円
  • 特別障碍者手当:3ヶ月で約7万8千円=ひと月あたり約2万6千円

ということで、この2つを足すとひと月あたりだいたい10万6千円というのが僕が受けている「障碍者手当」の総額だということになる。ちなみに、「障碍者基礎年金」っていうのは国民年金に加入しているか、僕みたいに20歳以前の段階で、所定以上(2級以上)の障碍を受けていると認められたときにもらえるもので、国に申請するもの。「特別障碍者手当」っていうのはそのなかでも、特に障碍の程度が重いと認められたときにもらえるもので、管轄は自治体なんだけど、今はどこの自治体でも同じくらいの金額なんじゃないかと思う。だから厳密には違いがあるんだけど、ここではこの2つをまとめて「障碍者手当」と呼ぶことにするよ。

あと僕は現時点では受けていないけど、もし生活保護を受けた場合は、こういう手当とかも生活保護費と一緒に調整されるから、「手当+生活保護額」って感じで何十万円ももらえるわけじゃない。生活保護の額は自治体によって違うけど、僕が今ひとりで独立したら全部でひと月13万円くらいはもらえるんじゃないかと思う。一応、「障碍者加算」っていうのもあるからね。

ただ、今の僕の「固定収入」はあくまでも10万6千円だ。僕は一応「最重度の障碍者」(1種1級の特別障碍者)だとされているから、生活保護を別にすれば、日本にいる限りこれ以上の障碍者手当を受けられることはないということだ。言い換えるとこれが「上限」ということだね。

じゃあ、この手当の「代償」は?

もし僕が実は健康で、バリバリからだも動かせて、不便なこと(障碍)なんてまったくないのに、月10万6千円も「不正受給」しているのだとしたら、それはズルいと言われてもしかたがないだろう。でも、実際僕のからだは思うように動かないし、そのことで生活上の不便を感じることも多々ある。そして、その「社会」が変わればその不便はかなり解消されそうなんだけれど、それが少なくともすぐにはできないから、その「代償」として社会(政府・自治体)は僕に(今のところ)ひと月10万6千円を支給してくれている。これを逆から言うと、もしあなたが僕と同じように「生きているだけで」10万6千円をもらいたいと思ったら、それなりの「代償」を覚悟しないといけないということだ。それは具体的に僕の場合で言うと、

  • からだがうまく動かせない
  • からだの節々(肩・腰・背中・足……)が痛い
  • 行きたい場所(店・教育機関……)などに受け入れてもらえないことがある
  • そもそも、ひとりでは外に出られない、食事もできない、風呂にも入れない
  • 頻繁に通院する必要があり、ときどき入院したり、手術したりすることもある
  • アタマのなかに「空間」を描くのが不得意だから、地図は読めない。道もよくわからない
  • 「一般就労」は茨の道だし、かといって「福祉的就労」の場では最低賃金は必ずしも保証されない。さらには、「利用料」を差し引いたら「賃金がマイナス」になることもある
  • 賃貸に入るのに部屋探しに苦労する。いろいろ改造するのに追加出費が要ることも多い
  • たまに、トイレに間に合わないことがある
  • 肉体機能的にはもう「老後」みたいなもの。疲れやすいし、「寿命」もたぶんわりと短め

細かく言っていくとまだまだあるし、ひとつひとつの詳しい事情はこれから書いていくことになると思うけど、これが僕が受けている「障碍」で、10万6千円の「代償」なんだ。

これってほんとに、「得」だと思う?

こうやってざっくりと自分の「固定収入」とその「代償」を見てみたけどさ、

障碍者はなんだかんだ得だよね〜

とかって思ってるひとは、これ見てもほんとにそう思う? 確かに、細々とした「特典」は他にもあるよ。「ケータイ料金」が安くなったり、「所得税」が安くなったりとかね。でもさ、それを踏まえたってさ、これってほんとに「割に合ってる」と思う?

逆に、もし僕が「ひと月10万6千円をもらえる権利」(+諸々の特典)と交換で、あなたのからだを「買える」としたら、それってかなり「安い」と思うんだけど、どう思う?それか試しに3か月くらい、からだ入れ替えてみようか?

もちろん、そんなことは(今のところ)できないし、僕も別に「僕が僕であること」がイヤなわけじゃないんだ。だって、僕は今まで20年以上「こうやって生きてきた」んだし、みんな結局、「自分なりに生きていく」しかないでしょ?それに僕がもしこのからだで生きてなかったら、この『四つ這いおとな』も書けてないしね。

でも少なくとも、

障碍者って得してるじゃん!ズルくない?

っていう考えは甘いって、僕のなかでは結論が出てる。ちょっと調べてみたらさ、

なんてページがあって、

無能者はこれからの社会で見捨てられます。

働けない身体障害者が絶対に得で幸せになれます。

働けない身体障害者で生活保護で生活すれば国家に守られていることになります。

(中略)

でも無能者とはいえ自傷行為で障害者になっても生活保護は条件が揃っていればちゃんと出ます。

(中略)

増税で困るのは労働者です。

そうなると余計に健常者より障害者のメリットが大きくなるので自殺未遂で障害者も増える可能性があります。

なので今のうちに無能者は障害者になったほうがお得なんです。

なんて書いてるんだけど、これがもし「高度なユーモア」とかじゃなくて本気で言っていることなんだとしたら、僕は絶対賛成しないよ。せっかく元気なからだ持ってるのに、もったいないって。「無いものねだり」したってなにも変わらないんだから、お互い持ってるものを活かしていこうじゃない?それは損得の問題じゃなくて、きっと「生きかた」の問題なんだよ。僕は僕なりに考えて生きてみるから。だって単純に、せっかくの人生、楽しんでみたいからね。

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